70点

受験で競い合い、就職で競い合い、キャリアで競い合い、年収やマンションの階数で競い合い、SNSでは幸福度を競い合っている。

間抜けで愚かな話だけど、みんなただ愛して欲しいだけだ。

求めてないで仲間を愛せば、そんな馬鹿げたスパイラルから一抜けたできるのに。

誰だか忘れたけど黒人ラッパーのリリックでも「ごちゃごちゃうるせぇ、ただ愛せ」とある。

「CDウォークマンを回して合って、イヤフォンを分け合って音楽を聴いていた仲間と久しぶりに会ったら、肩書きや車のスペック自慢大会になって俺は肩を落として帰った」という一文を読んだ。

肩を組んで歩いた仲間から競争相手に変わってしまうのはなぜだろう。

みんなそれぞれの仕事で戦っている。

勝ち得たものや失ったことが山ほどあるのも知ってる。

言わなくても知ってる。

だからお互いの日常に敬意を払って、乾杯しながら未来が明るくなるような話をしようじゃないか。

例えば、今年の冬もスノーボードに行かないか?とかね。

 

野村さんの結婚式の数週間前から楽しいことが続いた。

その数週間は長い前夜祭のようで、新しく何かが始まる機運を感じ、変化の渦の真っただ中にいるようなワクワクがあった。

アキラから突然の招集があり、何人かで寒空の下、日比谷公園でワイワイと酒を飲んだ。

門前仲町の幼馴染達と鎌倉を散策して、午前中から酔っ払い過ぎて岩下君はその日仕事を休んだ。

丸ちゃんが買った日本酒「湘南」が超まずくて、みんなでマズいマズいと言っていると丸ちゃんが「俺がわりぃのかよ!・・・わりぃのかよ俺が!」と水平線をバックに倒置法で言い直したのが印象的だった。

東京に戻り、みんなで熱すぎる銭湯の湯に浸かった後、松下君はピザ屋の前でLサイズのピザにようなゲロを吐いた。

「これがほんとのpizza of deathだぜ」って親指を立てていた。

松下君、結婚おめでとう。

 

情熱的な長い後夜祭を終えて、いよいよ川越祭りの日に野村さんの結婚式となった。

僕らだけで総勢40名弱の仲間が集まった。

ホテルの担当者の方から「披露宴の前室に焼き鳥を持ち込んだ奴らは初」「前室でこんなに酒を飲むのは初」の二冠をいただいた。

これだけの仲間が集まるとオールスター感謝祭状態になってしまい、1秒足りとも無駄にはできないと、とにかく落ち着かなかった。

友人代表でスピーチをさせてもらった。

僕の暗記力は鳩なみなので、覚えたところでどうせ忘れてしまうから、野村さんの顔を見ながら何を話そうか考えたけど、マイク持つまでまとまらなかった。

結局、まとまらない話をしてしまったけど、野村さんも「マジでこれもんよ」って親指立ててたし、野村さんのお父さんも「大君、熱かったよ!」って褒めてもらえたから満足だ。

ちなみにその後、友達30人くらいに「スピーチどうだった?」って感想を尋ねた。

僕は表現は他人の評価ありきだと思っているので、そういうの執拗に聞くタイプだ。

飯田は「スゲーよかった!70点!」と言っていた。

あと30点の為には精進が必要だ。

 

その一週間後に後夜祭が行われた。

急遽の開催だったから5人くらい集まればいいなと思っていたら15人も集まって、8人席がパンパンになった。

ビールも100円だから景気よく飲みまくった。

野村さんは墓標に刻みたいくらい「後夜祭」って言葉が好きだから、盛大に盛り上がって幸せだった。

 

きっとこれからも嫌な奴とか嫌な事が目の前に現れるだろうけど、そんなもん鬼シカトして、幸せだけを一直線に見続けてやる。

でも、いつか僕がお門違いなとこを凝視していたら、「おいバカ、こっちだこっち」と肩を叩いてほしい。

その指差した先にはきっと楽しいことがあるに違いないから、一緒に笑いながら歩いて行ってみようじゃないか。

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ハヤブサマガジン 2005年10月活動開始。 フリーマガジン「ハヤブサマガジン」を日本全国のフットサルコート、スポーツバーなどに配布。 vol.7をもって活動停止。2013年、ウェブマガジンとして活動再開。ブログは日常の話です。