プリクラもう貼るとこない

人との価値観のズレについて話すと、10代、20代のうちは「はいはい、個性的だね」とダンッと断ち切られてしまったものだけど、30代も半ば近くになったので、もうそろそろ大丈夫なはず。

大人になってからのほうが、良い意味で他人はどうでもよくなるので、会話やコミニュケーションは円滑になったと感じている。

素直になったのではなく、人は誰もが漏れなくズレているということに気が付いたのかもしれない。

 

幸いにも笑われて恥ずかしい季節はとっくに終わったのだ。

他人に求めず、自分自身にだけ全てを期待し、「俺もお前も好きにやろうぜ。なにも強要なんてしないよ」というのが大人だとすると、学生時代がいかに不自由で退屈なものだったのだろうかと恐ろしくなる。

「センスないバカばっかりだな死ね」と世界を恨んでいたセンスないバカなティーンファッキンネイジャーだった僕にとっては、「学生時代に戻りたいナリー」とたまに言う人がいるけど、そんなことが現実に起きたら悪夢のようなホラーだ。

 

自分自身を普通で退屈な人間と思い込んでいる人のズレは愛おしく感じる。

普通な人間だと信じ込んでいる人達の「普通ではないズレ」に、良質なコメディー映画を観たかのように、腹を抱えて笑ってしまう。

ここらへんはウディ・アレン先生が得意とするとこでしょう。

「無心のズレ」「他意なきズレ」に関しては、漫画「へうげもの」にもあるように戦国時代に武将達も笑っている。

赤ちゃんや動物達の真顔がなぜ面白いのかもこれに当たると言える。

逆に作為的な変顔が全く面白くない理由も確実にこれに当たる。

 

対外的にこう見られたいと人は願っても、残念ながら僕もあなたも他人からは自分が思ったようには決して見られていないという事実を遅かれ早かれ気が付き、大人になり、これもまた良い意味で色々とどうでも良くなる。

「周りと合わせている」と自称する人の頑固さ。

真面目な人間の不真面目さ。

カッコよくキめようとしている奴のダサさ。

笑われないように取り繕っている人の笑える感じ。

ハードコア気取りの脆弱さ。

優しそうな人の凶悪さ。

このように、僕の経験上、その人のイメージと本質は全くの逆の例がとても多い。

先に挙げた、自分が普通で退屈だと思い込んでいる人が本当は強烈な個性を胸の中に潜ませているパターンが多いのも、まさに典型的な逆の例だ。

 

フェイスブックやツイッターで明るい人は会ってみるとかなりの確率で陰鬱だし、友達がいっぱいいそうな人はおそらく知り合い程度がたくさんいるだけだし、リア充っぽい人は暇人が多い。

これに関しては僕調べでかなり自信を持って主張しているけど、友達や幼馴染に話しても「あ、そう。俺達には関係ない話だし、その人達のことはどうでもよくね?」と一蹴される。

そう言われたらそれで終わりだけど、僕は20代前半にパンクロックに傾倒していたから、笑える嘘は大歓迎だけど、エゴ丸出しの嘘臭さに関しては損得勘定抜きに過敏に反応してしまうのだ。

別に本当の姿を暴いてやるぞ!なんてつもりは全くない。

ただ僕の中で暴いて、「大変ですねー」と心の中で馬鹿にして楽しんでいるのだ。

 

思えば、「夜遊びして寝てないわー」「地元の友達から連絡が多いわー」「プリクラもう貼るとこないわー」などのイケてるグループ(今は絶対にイケてない)の男女の発言に対してもニキビ面の僕は心の中で馬鹿にしてニギィニギィと笑っていた。

でも本当は心のどっかで羨んでいたのかもしれない。

きっと羨んでいたはずだ。

だって僕は17歳なのに21時に寝てたし、地元に友達いないし、プリクラなんて撮ったことなかったから。

今だったら同級生が「プリクラもう貼るとこないわー」と言ったら、素直に「マジで!超イケてんじゃん!ウヒョー、最高!お前、マジでイ!ケ!テ!ル!」と大絶賛で祝福することができるのに。

祝福する準備は整っているので、誰か「ドンペリ呑み飽きたわー」とか言って欲しいのに、まわりでは「あそこの店がビール100円だってよ!俺、無限杯呑むわ!」「唐揚げ食べ放題だって!俺、無限個食べれるわ!」などの身の丈発言しか聞こえてこない。

 

羨ましいと言えば、恋人や子どもについて自慢できる人を羨ましく感じる。

女・子どもの話を他人にするのはダサいという美意識がアダとなり、気を使ってもらいその手の質問をされても、ゴニョゴニョと誤魔化すことしかできない。

聞いてもないのに「ウチの子可愛いでしょ!」とか、「うち奥さんが美人でさ!」と堂々と自慢している人は皮肉なしに凄いなと思う。

一回してみたいけど、僕には死ぬまでそういうことはできない。

 

自分の性分が仇となり、失敗することが多い。

特に初対面の女性に対してだ。

人にはそれぞれ役割があり、僕の役割はヒールとなって場を盛り上げることだと誰に頼まれたわけでもないのに、勝手にその役を引き受けている。

僕達の世代はゴリゴリのブラックジョーク世代で、女性や違う世代の人が眉をひそめる発言を連発し笑い合っているという習性がある。

僕はその最たる例で、笑わそうとジョークを話しても、女性は目をそらして終わりだ。

パンサーのような明るく・楽しいが「笑い」だと思っている女性からしたら僕はただのキチガイだ。

これは性分だからもう仕方がない。

友達の彼女や奥さんにもブッチギリで嫌われていると思うけど、「僕が悪いです。ゴメンなさい」としか言えない。

古くからの女友達は優しいから僕のジョークに笑ってくれるので、それが当たり前だと勘違いした僕は初対面の女性に同じノリで行ってしまい大失敗する。

初対面の女性や友達の彼女や恋人に対しては、世間話だけに止めておこうと心に決めた。

口が仇になって古くからの友達を失うような馬鹿なことは避けたい。

 

「人気が出るブログの書き方」という記事を目にした。

人気を得たい僕はその記事を寄り目になるほど真剣に読んだ。

その記事の最後にはこう書かれていた。

「自分の主張や自分の意見を書くのはやめましょう。

そんなことは誰も興味がありません。」

人気者への道は遥か遠いことに愕然とした。

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ハヤブサマガジン 2005年10月活動開始。 フリーマガジン「ハヤブサマガジン」を日本全国のフットサルコート、スポーツバーなどに配布。 vol.7をもって活動停止。2013年、ウェブマガジンとして活動再開。ブログは日常の話です。