今晩はいくら呑んでもちっとも酔わない。
雨上がりの夜を歩いていていると、いつかどこかで嗅いだことがある匂いと、いつかどこかで感じた雰囲気に、いつかどこかに旅行したことを思い出す。
ムッとする湿度と赤、青、オレンジ、黄色に光るネオン。
遠くで鳴いている犬の声も、いつかどこかで聞いたことがあるような気がした。
誰が言ったか忘れたけれど、「僕達は必死になって走ってずっと遠くに行ったつもりが、あの頃と同じ場所から一歩も動いていなかった。」という言葉を思い出した。
僕はその言葉を見た時に、ひどく残酷な言葉だと腹立たしくなったけど、今はそうは思わない。
それはつまり、僕は僕から絶対に離れられないのだと思うと、なんだかとても安心した。
そして何を書いても遠くにはいけないなら、せめて腹から笑えるくだらないことを書きたいと思う。
笑わしたい人が何人かいるんだ。
バラエティー番組を観ていて、構成や演出に腹立つことがあるのは当然いつもあるけれど、出演している芸人に対して腹が立つことはなかった。
笑いは文化の最先端かつ、最も優れた芸術だと思っているので、ほとんどの芸人に対して敬意を表していた。
でも、最近は違う。
誰かが話すとスベるように仕向ける風潮、ギャグに対する冷やかな対応、誰かの話にひな壇から乗っかってイジる芸風、全て嫌いだ。
アクションを起こした人が馬鹿を見て、それを嘲る人が面白いとされるなんて絶対に間違っている。
僕が大好きなパンクスギャグ「そんなの関係ねぇ!」でお馴染みの小島よしお氏が、ある番組でギャグをやった時に安全な位置のひな段から「もうつまらない。」という残酷な一言を言った芸人に対して「だったらお前がやってみろ!」とシャウトした小島氏に心底共感した。
もしもあなたが先頭立ってなにかをやって、誰かがそれを笑ったり、建設的な批評とはほど遠い、ただのケチをつけてきたら、この言葉で済むからもう何も気にしなくていい。
「だったら、お前がやってみろ。」
おやすみなさい。