アイルランドと言えば、ビール、ケルト文化、アイリッシュパンク、U2、映画『ONCE ダブリンの街角で』などが有名ですが、格闘技は今一つ有名ではありません。
そんなアイルランドから世界に名を轟かす総合格闘家が今リングで大暴れしています。
コナー・マクレガー、ダブリン出身の27歳(1988年生まれ)、通称「ノトーリアス(悪名高い)」。今までの格闘家にはあまり見かけなかったファッションセンスを持ち(スタイリストではなく本人のコーディネート)、リング外のマイクパフォーマンスの語彙の量、相手を挑発する言葉の種類の豊富さ、そして対戦相手以外に対する礼儀正しさなど、プロフェッショナルとして「客がどうしたら喜ぶか」を各スポーツ選手の中で最も理解していると米国スポーツメディア各社もコメントしています。ファイトスタイルは華麗なボクシングテクニックに加え、ド派手な回転系の蹴り技も得意としており、打撃の精度は当代一と言われています。
その戦績は22戦19勝3敗(17KO)、2008年にプロデビュー戦を判定で勝利し、2012年はイギリスの総合格闘技団体CWFCで2階級制覇を果たしました。
その後2013年4月、UFC初参戦となったUFC on Fuel TV 9でマーカス・ブリメージと対戦しパウンドでTKO勝ち、ノックアウト・オブ・ザ・ナイトを受賞しました。
その後、世界最高峰のリングUFCで破竹の6連勝し、コナー・マクレガーという名は全米と世界の格闘ファンの中では超有名人になりました。
故郷アイルランドでは2015年のGoogle検索ランキングで「最も検索されたアスリート」で1位、「最も検索された検索ワード」でも3位、「最も検索された人物」でも2位に入りました。
リーボックとスポンサー契約を締結など収入の面でも右肩上がりで2015円の推定年収は約30億円‼と言われています。UFCに参戦する以前はアイルランドの社会福祉事務所から週188ユーロの貧困者向け手当てを受け取っていた彼が、今やラスベガスの一等地にある6つのベッドルーム、約11,500平米の自宅を手に入れました。そしてUFC参戦後、無敗で再短最速で2015年12月12日に【UFC世界フェザー級王座統一戦】のタイトル挑戦に辿り着きます。対戦相手は「総合格闘技のフェザー級世界最強」「世界フェザー級絶対王者」と評価が高い、ブラジル人格闘家のジョゼ・アルド(27試合25勝1敗/2015年12月11日時点)。※写真左
彼もまたブラジルのファヴェーラで生まれ、貧しい家庭に育つというバックボーンがあり、格闘技を始めた当初は貧しく空腹に耐えながら練習していた若者がUFCでアメリカンドリームを掴んだというストーリーはコナー・マクレガーと一緒です。
この試合は試合前から舌戦に次ぐ舌戦が繰り広げられ、多くのメディアを巻き込み、新しい格闘ファンを数多く生みました。
軽量の時も一触即発状態で、間に入っているいつもニヤついているUFCの代表ダナ・ホワイトも、「ちょ、ちょ、ちょい待ち!」と慌てた様子。
コナー・マクレガーはアルドとの睨み合いで「I can smell the fea(お前の中に恐怖を感じるぜ)」と囁いたそう。世紀の一戦前日の記者会見ではジョゼ・アルドが持っているベルトを「これは俺んだよ!」と奪い取り、乱闘寸前になりました。
このような両選手の挑発を見事にプロモーションに活かし、この1戦はUFCにとって2015年下半期最も力を入れた興業となりました。
そして試合当日、開催地であるMGMグランドアリーナのチケット収入だけで1000万$(約12億円)のMGMの新記録を樹立し、ペイ・パー・ビュー(PPV)購入数もUFC新記録となる約150万件に到達しました。
試合結果は・・・1R開始13秒で左フックによりKO勝ちを収め、コナー・マクレガーが王座統一に成功!。
13秒のKO勝ちはUFCのタイトルマッチ史上最短記録で、この試合でコナー・マクレガーがパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを受賞。
この試合でコナー・マクレガーがゲットしたファイトマネーは50万ドルで、そしてPPVボーナスは推定1200万ドル(15億円)とされています。
コナー・マクレガーはこの試合を振り返り、「僅か13秒だったかもしれないが、チームや家族と人生を懸けて頑張った結果があの13秒だった。偉大なチャンピオンのジョゼ・アルドはリスペクトしている。」と自身のInstagramコメントしています。
この1戦から3ヵ月後、1つ階級を上げライト級の王者ハファエル・ドスアンジョスとのライト級タイトルマッチが決定していたが、試合3週間前にドスアンジョスが足を骨折したために負傷欠場。
これにより、さらにもう一つ階級を上げ、ウェルター級契約で永遠の不良ネイト・ディアスとの試合が決定。この記者会見も例のごとく一触即発の空気でした。
試合は下馬評を完全に覆し、2Rに打撃をヒットさせ、嫌がったマクレガーのタックルを潰してマウントを取り、ブリッジで逃げようとしたところにネイト・ディアスがリアネイキッドチョークで一本勝ちという結果でした。この試合でコナー・マクレガーはUFC初黒星となりました。
しかし、コナー・マクレガーはフェザー級のベルトを所持しており、今後は1つ上の階級のライト級のタイトルの挑戦し、UFC史上3人目の二階級制覇を目指しており、その先には史上初となるUFC3階級制覇を目論んでいます。
素手で戦う状況で自分自身を守ることが出来るように子供の頃に始めた格闘技で、世界を魅了するコナー・マクレガー。
プロのスポーツ選手はファンがいて成立する仕事です。
「どうしたらファンが喜んでくれるのか」を結果や技術論だけでなく、言動や振る舞いもファンサービスだと捉え、スポンサーのこと念頭に入れ、スポーツ興業がエンタメビジネスだと理解しているコナー・マクレガーはプロフェッショナルと鑑と言えるでしょう。
インタビューで仏頂面して「・・・いえ、べつに」とか「頑張るだけです」くらいしか話すことができない日本のメジャースポーツ選手も見習ってほしいところです。
そして、日本からも彼のような勢いがあり、もしかしてUFCのベルト獲れるかもと夢が見られる選手が現れることを願っています。